傘化け(かさばけ)

妖怪独話

とある駅の周辺では、雨上がり後、風と共にいきなり目の前を遮られる怪現象が頻発していた。

歩行者がただ遮られるのなら問題ないのだが、車の前にもばさりと丸い影が覆いかぶさり、重大な交通事故を起こすのだからたまったものではない。

「また、若造たちの仕業か…」

番傘化けの雨之丞は、ふぅと深くため息を付いた。

最近増えている洋傘化け。忘れ物や捨てられた傘がその恨みによって妖怪となった者たちだ。

長く使われ妖怪となった古い時代の傘化けと違って、短絡的に行動する今どきの若者妖怪たち。

いずれもっと大きな事故を起こすだろう。
そして彼ら洋傘化けたちが、大怪我をすることは火を見るよりも明らかだ。

「こうしちゃいられねえな。」

かわいい後輩たちを守るため、番傘化け雨之丞は雨回り先生になることを決意したのであった。

「今度さ、体に火をつけて人間に飛びかかったらおもしろくね?」

「さらに回転したら、火の玉飛ばしてるみたいで、かっこよくね?」

「いいねー」

駅前でヒソヒソ聞こえる洒落にならない悪巧み。

「おいこら、お前ら死にたいのか!」

洋傘を追いかけ回す番傘お化け。

「やっべ!雨回り先生だ!」

今日も雨後の駅前で、洋傘番傘追いかけっこ。

風に吹かれてゆーらゆら。

はてさて、老妖怪と若者は、理解しあうことができるかどうか?

それを知らぬは人間のみ。

ただ分かることは、めっきり事故がなくなり、平穏が駅前に戻ったということだ。

妖怪解説

歌川芳員『百種怪談妖物双六』に描かれている傘の妖怪 wikipediaより

傘化けとは、からかさ小僧、から傘おばけ等と呼ばれる、唐傘が妖怪変化したものだ。
メジャー中のメジャー、知らぬものはいない妖怪なのだが、ほとんど伝承がないという。
しかし設定の明快さからか、江戸時代の妖怪ブーム以降、絵師により多くの書物に描かれ人気を博している。

さて、こと現代において、この傘化けこそ現代妖怪として生まれ変わる要素があるのではないかと思っている。
物語に書いた忘れ傘、捨て傘問題。
コンビニで安価なビニール傘が販売され、高い傘を大切に使うより、もはや使い捨て感覚で利用されるようになった。
なんと年間約1億2000万本の傘が、日本で消費されているという。
傘にとって、もっとも恨みつらみがある時代と言えよう。
台風後の道端に打ち捨てられた傘の山を見ると、いずれ彼らが化け、人々に復讐をするのではないか?とゾッとする。

私の中ではとても心配している事案であり、自らも軽々しく傘を扱わないよう気をつけねばと気を引き締める次第である。

展示告知

ストリート内にある大怪店にて、「傘化け」の絵はがき、グッズを展示、販売します。
ぜひ遊びに来てください!

●企画名:傘化け展
●日程:2018年6月14日(木)〜6月24日(月)
●定休日:6月19日(火)20日(水)
●時間:12時〜19時
●場所:大怪店
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南2-40-1
阿佐ヶ谷アニメストリート内
050-5309-2219

牛鬼展HP goo.gl/4Z6cri

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