麒麟(きりん)

妖怪独話:麒麟送子

山越え河越え砂漠越え、麒麟の背中で揺られ揺られて数千里。背上の童は、襲いかかる悪鬼どもを如意を振るってばったばったと薙ぎ払っていた。
最後の一匹を麒麟が泰山の遥か彼方に蹴り飛ばし、この騒動に決着がついたのは、夕の刻を過ぎていた。
「産まれてそうそう、大変なお勤めになりすみません・・・」
申し訳無さそうな表情を向け、麒麟は童をねぎらう。
全く疲れを見せない凛とした表情で、コクリとうなずく幼子。さすが後の聖人となるだけあると、麒麟は感心するばかりだった。
「当分は悪鬼も凝りて寄りはつかないでしょう。明日からは海を越えますので、ごゆっくりお休みくださいませ。」
童は、麒麟の言葉に従い、背中に胴を預けすやすやと寝息を立て始めた。
麒麟は、隣の島国に後の英雄を送り届けよと、天命を受けた。
頻繁にこのお勤めを行ってはいるが、成長し真の英雄となる童は、ごく僅かだ。
先程の悪鬼の存在も妨げの一つである。しかし、もっとも警戒すべきなのは、複雑怪奇な世俗世界にどっぷりはまってしまい、信念を曲げ、享楽に陥ることであろう。
「今まで見た子の中ではしっかりしているから、大丈夫かな。」
自分を見失わず、世界を導く大人になってほしいと願いつつ、麒麟は海のある方角へ、希望をのせて突き進むのであった。

妖怪解説

今回のテーマは「麒麟」。その中でも「麒麟送子」という、中国ではおめでたい言葉を題材にイラストを描いてみた。

ご存知の通り、麒麟は中国で「瑞獣」(ずいじゅう)と呼ばれる、縁起の良い妖怪の一種である。
麒麟が後の聖王となる男児を連れてくることを、「麒麟送子」(きりんそうし)と言う。
「麒麟送子」は、民間信仰の一つとなっており、自分の子供を良い子に育たせるために麒麟に参拝するそうだ。
その参拝方法は、麒麟を奉る神社等に出向くのではなく、徳の高い人物の家に参拝するというもの。
なぜなら、徳の高い人の家には、麒麟がいると信じられているからだ。
参拝をしたついでに、人徳者から教えをもらうこともあったのであろうか?そう考えるとなかなか合理的な信仰だったのかもしれない。

麒麟送子:Baidu百科より

麒麟送子として麒麟の背にまたがる童子は、片手に蓮の花、もう片手に如意(意のままに操れるという権威や威儀を正す仏具)を持つ。道教の国に、仏教的な意味をもたせる道具を携えているのが興味深い。
背上の童子は、聖王を乗せていたという意味合いから、男児に限られていた。
しかし現代では、男児女児ともに描かれることが多くなってきたようで、そこに平等社会の流れを感じられる。

中国では、縁起物として「麒麟送子」の絵を部屋に飾ると福をもたらすと言われている。
ぜひとも、このイラストを部屋に飾り、どんどん呼び込んでいってもらいたい限りである。

参照:麒麟:四霊の一柱で徳が高く優しい瑞獣 (プロメテウス)
http://prometheusblog.net/2016/11/27/1045138543/

参照:麒麟送子 (中国祈子风俗) (Baidu百科)

https://baike.baidu.com/item/%E9%BA%92%E9%BA%9F%E9%80%81%E5%AD%90/1623136

展示告知

2018年3月22日より、阿佐ヶ谷アニメストリート内にある大怪店にて、「麒麟送子」イラストと絵はがきを販売します。
イラスト(2L版額付き)1000円、絵はがき200円となっていますので、ぜひお求めください!

●企画名:麒麟展
●日程:2018年3月22日(木)〜4月1日(日)
●定休日:3月27日(火)、28日(水)
●時間:12時〜19時
●場所:大怪店
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南2-40-1
阿佐ヶ谷アニメストリート内

050-5309-2219

詳細:goo.gl/sCziUe

泰雅-TAIGA-
アーティスト。 絵画、映像、イラスト制作やアートパフォーマンス、音楽活動しています。 最近は妖怪作家に転身。
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